スマートフォン文字入力速度の記録が更新されたとのニュースが目にとまった.今年(2014年)5月のことである.
携帯電話やスマートフォンで速く楽に文字が打てるしくみの研究も,僕の挑戦対象だから,気になってすぐにニュースをチェックした.
「17歳のブラジル人がGalaxy S4とFleksyキーボードを利用してケータイ早打ちの新ギネス記録を樹立」
挑戦対象と言っておきながら,最近のこの手の情報に疎かった僕は,早速,iPhoneにFleksyキーボードアプリをインストールし,ごく簡単に使ってみた.
感想は,「んー・・・」だった.機能のポイントがぴんと来ず,何が売りなのか分からなかった.分からなかったが,まあいっか,と流した.
それから1か月ほどが経ったある日,記憶の水面下でくすぶっていたFleksyが浮上してきた.Fleksyの何が凄いのか,落ち着いて確かめてみたいと思った.
使用法説明を落ち着いて読んで使ってみたら・・・
フレクシー,スゴ過ぎる!
最初に使ってみたときには,その本当の凄さをまったく理解していなかったのだ.
(余談だが,どうも,僕が巡り会ったいくつかの,日本語でのFleksy紹介記事では,概して,この本当の凄さが説明されていないように思う.)

では,何が凄いのかというと,ある英単語を入力しようとこのキーボード(これはFleksyキーボードのスクリーンショット)をタッチしたら,指がずれてタイプミスしてしまい,
dlezivke
となったとしよう(実例).するとFleksyは次の単語に変換してくれる:
flexible
ミスタイプした文字列(dlezivke)と,本来入力したかった単語(flexible)を比較してみると,文字単位ではまったくかけ離れているが,キーボード上の動きでは何となく類似していることが分かる.
別の単語の例を示そう.ある英単語を入力しようとして次のようになった(実例).
jeyvjars
これは何を入力しようとして指がずれてしまったのか? 上のキーボード画像と見比べて考えてみて欲しい(答えは最後部に示した).
要するに,Fleksyでは,キーを正確にタッチする必要はなく,間違いを恐れずにそれらしい場所をタッチして行けば,正しい単語に変換してくれるのだ.
例えていえば,多少滑舌が悪い人の話でも,何が言いたいのかはほとんど分かるのと同じである.
Fleksyには,この特徴を反映したモードも用意されている.文字も枠もない,ただのグレー平面モードである.キー配置を知っていれば,もはやキーの表示すら不要なのだ(下図).

この小気味よさや面白さは,無料アプリで体験できる.
(公式Webサイトはこちら)
Fleksyが登場した今,位置ずれの観点だけからいえば,タッチスクリーンにおけるキー触感の必要性はほとんど消滅したと言っていいかもしれない.Fleksyでは,位置ずれのみならず,タッチ欠けにも対応している(1文字くらい抜け落ちていても問題ないのだ).
(参考:ノオト「キー触感のあるスマホ」)
だいたいそれらしいところをタッチすればOKという特長を活かして,スマートフォンよりさらに小さなスマートウォッチ向けの文字入力インターフェイスとして早速実用化されたようだ.
これまでの方式では,腕時計で文字入力できるとは考えられなかったが,Fleksyはその壁を乗り越えたようだ.
(スマートウォッチ向けFleksyの紹介記事はこちら.ムービーあり.)
〈問題の答え:keyboard〉