虚構の楽しみ
通信と人間行動に関する研究会に参加した.
その研究会は,まさに学際的で,情報技術としての通信を中心に据えるのではなく,情報を送受する人間の視点で通信を捉え直そうという会である.
これまでにも,もちろん,人間視点での通信の考察は古くから多数あった(人間とコンピューターのやりとりに関する HCI = Human Computer Interaction の分野が代表格だろう)が,それをひとつの分野として構成しようという発想が面白い上に,研究の目的を明確化するのに有益だと思う.
研究会では非常に広い観点からの話題提供があり,どれも興味深いものだったが,その中に,僕が液晶テレビで地デジを見て感じている不快感を改めて思わされた話題がある.
そのキーワードは臨場感である(臨場感にはさまざまな意味が含まれるため,すべてをひっくるめたひとつの英語表現を選ぶのは難しいらしい.Sense of presence というのが一般的だそうだ.).
地デジ放送の何が不快かというと,それは見え過ぎることである.
脂ぎった顔,伸びかけの髭,耳毛,ヤニ色の歯,・・・.
不快とまでは行かない場合でも,見て残念に思うことは多い.
娯楽としてのテレビに期待するもののうち,虚構(フィクション)は大きな部分を占めている.だから行き過ぎた臨場感は考えものだ.それが報道であっても,臨場感の制限が必要な場面があるだろう.
ここでは視覚的な面についてのみ述べたが,これは聴覚にもあてはまる.また,触覚,嗅覚,味覚をテレビや映画で提供する研究も進んでいるから,臨場感の調整が重要な課題となろう.
【参考:2011-10-31】ノオト「3D映像:賞賛と批判」
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