ウナギの卵---あまのじゃく的雑感
史上初めてウナギの卵を採取するという快挙がメディアを席巻したのは先週のことである.
ニュースもワイドショーもこぞって取り上げていた.
テレビで断片的に紹介された映像で研究者自身が説明していたスライドを見ただけだが,数十年にわたって日本列島から太平洋を南下し,成魚から稚魚,そして卵へとたどり着く過程は,サスペンスドラマで犯人が追いつめられるワクワク感に通じる研究(探求)の醍醐味を感じた.
もちろん,快挙を達成した今となっては懐かしい苦労話になるであろう数知れぬ失敗や地道な試行錯誤があったはずだから,研究者のはしくれの僕も成功を讃えたい.
しかし,である.
これで美味いウナギがいつまでも食べられるようになるでしょう,というような内容の発言には違和感を覚えた.
マスコミが言うのならともかく,プロジェクト・リーダーである研究者の発言だからだ.
僕はあまのじゃくだから,基本的に何が起こってももヘッチャラである(ヘッチャラを装っている).
だから,自分の大好物が食べられない状況になったとしても,やせ我慢かもしれないがヘッチャラなのである.
現に,30年ほど前まで僕の大好物だったすっぱい夏みかん(砂糖を付けて食べてちょうどいいくらいにすっぱい夏みかん)が市場に出回らなくなり,食べる機会がなくなって残念だが,それはしかたないとあきらめている.
毎日食べ続けても最低1か月は楽しめると確信しているカレーライスが食べられなくなっても,寂しくはあるがそれはそれで仕方ないと思える・・・と思う.
そんな僕だから,その研究者には,ウナギの完全養殖につながるかどうかは知らないが,ただ知りたかったのだと言ってほしかった.
とはいえ,マスコミの報道では真実がそのまま伝わることはまずない.
編集の魔術で,発言者の見解はいかようにも操作できる.
あるいは,その研究者も,「鰻の蒲焼きが食べられなくてもいいって〜!そんな日本人がいるなんて信じられな〜い!だから大学の研究者は世間の気持ちが分からないんだ!そんな研究に我々の血税が使われていると思うと腹が立つっ!」という納税者感情を引き起こさないように配慮してのことかもしれない.変人だとは思われたくないから,世間の人が考えるであろうことを述べて無難にやり過ごそうとしたのかもしれない.
と,推定ばかりで書いてしまったから,ひょっとするとウナギが大の好物で鰻の蒲焼きのない土用の丑の日など想像できない,日本がそんな事態に陥ったらもう生きてる意味がない,だからウナギの卵を見つけたかったんだ,というのがその研究者の本音だとしたら,それはそれでブラボー!と言いたい.
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