生体認証
普段使っている銀行が生体認証対応キャッシュカードを始めたので,早速手続きをした.生体認証とは,人間が生体として有する特徴を利用した本人確認のことで,指紋,静脈,虹彩などの固定パターンを用いる方法と,署名時の運筆などの動きを用いる方法がある.基礎研究や,実用化へ向けた開発,そして実用システムの普及活動の何れも,現在大変に盛んである.技術分野では,生体認証はバイオメトリクス認証とも呼ばれている.僕が科学者として取り組んでいる研究の中には生体認証に関連したものがあるので,それがどのような形で実用に供されているのかに関心があった.
生体認証機能付キャッシュカードへの変更手続きで初めて分かったことがある.暗証番号を記憶し入力する煩わしさを回避するために生体認証が用いられているのではなく,安全性(セキュリティー)を一層高めるためのものだった.僕は最近,指紋認証機能付の携帯電話(正確にはPHS)を使い始めたが,そこでは暗証番号を忘れたとしても指紋で特別な機能を使うことができる.これに対して銀行のカードでは,生体認証を通過しないと暗証番号の入力も受け付けてくれないのだった.
カードの変更手続きは簡単とはいえないものだった.まず銀行で申込用紙に記入,捺印すると,10日ほどしてカードが郵送されてくる.それを持って銀行へ行き,登録や誓約をするための申請書に記入,捺印する.その際,左右の手から1本ずつ,認証に利用する指を選択する.申請書が受理されると,引き続いて指静脈パターンの登録を行なう.それぞれの指について,3回の登録作業と確認作業を行なう.これで新しいカードを使い始められる.
生体認証機能付とはいえ,対応していないATM,他の銀行やコンビニのATM,あるいはデビットカードとしての利用ではこれまで通り4桁の暗証番号だけで使うことができる.となると,生体認証機能付は無意味だと思うかも知れないが,意味はある.暗証番号だけで利用した際の限度額を設定できるのだ.生体認証機能付のATMでは銀行の設定する限度いっぱいまで引き落とすことができるが,暗証番号だけの場合(=不正利用かもしれない場合)には自分で設定した限度額までしか利用できないから,万一の場合にも被害を押さえることができるのだ.とはいっても,あまり限度額を低くしてしまうと,その銀行の支店のない土地に行ったときに不便になるから,極端に低い限度額にすることもできない.限度額を変更するには,またまた銀行に行って変更依頼書を出す必要があって面倒だから,余裕のある設定にしてしまった.
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