学生寮

2012年11月25日 (日)

耳口王子

Dorm耳口王子・・・・が25年以上前に考えついたこのことばを久しぶりに思い出させてくれたのは,大学で同じ同好会に入っていた友人だ.

あー,そんなことがあったねー.

それは,フォークソングやニューミュージックの弾き語りを楽しみ腕を磨くフォークギター同好会の中で,僕が結成した男性デュオの名称である.

音楽と関わりがありそうな字が使われているから深い意味があるのかと好意的な推理をしてくれる人もいるかもしれないが,それは偶然の産物であり,実は,「聖子」の構成要素をばらして並べたものである.これが僕のいいなずけとか恋人の名前であったならオトナな背景があるのだろうが,当時の僕はまだまだお子さまだった.ファンだと公言していて,仲間の誰もが僕がファンだと知っていた松田聖子である.

学園祭や定期演奏会ではコピーもオリジナルも披露したが,松田聖子のコピーはなかったと記憶している.公私を分けていたということだろうか!?

僕がはじめて買ったLPレコードは八神純子のもの,そして,はじめて買ったシングルレコードが松田聖子のデビュー曲「裸足の季節」だった.
(いや,八神純子のはレコードではなくカセットテープだったかもしれない!?)

松田聖子とは歳が同じで,誕生日が2日違いということもあって,親近感も加わり,僕のこだわり心(≒おたく心?)でもってデビューから4年間くらいはシングルレコード,LPレコード,ポスター,カレンダー,映画と,かなり入れ込んでいた.中学卒業祝いに買ってもらって以来使っていた腕時計の文字盤には,偶然にも「セイコ」と刻印してあった.刻印の“SEIKO”は一般には「セイコー」と読むようだが,僕は「聖子」時計と呼んでいた.

学生寮に住み,朝と夜は寮の食堂,昼は学食,そして日曜の昼は寮の近くの弁当屋,日曜の夜は寮の近くの定食屋,というのがパターンだった(日曜は寮の食事が休みだった).そうそう,寮の夕食のシステムを思い出した.前の月に翌月の食事希望を申し込み,支払いを済ませる.都合に合わせて日にちと朝夕の別を細かく指定できた.夕食についていえば,22時が食事受け取りの限度で,たとえ注文していてもそれを過ぎると無効になる.この時間は厳格である.払い戻しもない.学生にもいろいろと事情があるから,必ずといっていいくらい余りが出る.しかし,最終的には余らないシステムがうまく機能していた.21時45分くらいになると(いや,もっと早い場合も多かっただろう),数人の寮生が食堂にやってくる.目当ては注文主が現われない食事である.さもなければ捨てられる運命の食事だから,時間切れになれば食べてよい.もちろん無料である.注文主が駆け込んできたが既に同朋の手によってテーブルに運ばれた後だった場合や,逆に,22時目前で注文主が現われて,食事を狙っていたキャンセル待ち人がガックリと肩を落とす場面もあった.

脇道が長くなったが,このような質素な生活を,バンカラな雰囲気の残る男子寮で送っていた僕だから,レコードや,本や,映画が,世間の,社会の,あるいは人生の教材だった.寮生は150名ほどで,その9割は,変人か,おたくか,むさ苦しいかのどれかにはあてはまり,そして一部にはすべてにあてはまる学生もいた.そのような環境だから,松田聖子は僕にとっての偶像のマドンナだったのだろう.ただし,マドンナといえば多くの男子がこぞって注目するものだが,僕と同じ趣味の学生は皆無だった.松田聖子をマドンナ視している僕を見て楽しむ同朋は多かったが….
(そのバンカラな雰囲気を伝えるのは難しいが,映画「ダウンタウン・ヒーローズ」を少しだけ現代風にすると近いイメージができあがると思う.現代風にするのは,あくまでも“少しだけ”であることに注意.)

そういえば,その頃僕はレコードプレーヤーを持っていなかった.事前予約しておいたレコードを手に入れると友だちの部屋へ行き,カセットテープにダビングさせてもらった.だから,僕が持っていたレコードは1〜2回しかかけたことのない新品同様だった(そのレコードはすべて,学生寮を出るときに同室だった後輩に置き土産のひとつとしてあげてしまった.そのことをちょっと後悔したこともある….).CD世代にはイメージが湧かないだろうが,レコードは再生するたびに盤の溝がすり減って行く.だからレコードは何度も再生すると雑音が増える.溝をなぞり,そこに刻まれている音を取り出すためのレコード針もすり減るし,埃も影響するから,個人の部屋で再生する場合には雑音は避けられない.

参考までに,150名の寮生がいたが,テレビを持っている者は片手に満たなかったと思う.テレビ,新聞,雑誌などが置いてあり,椅子が10〜15脚ほどとテーブルがある6〜8畳程度の広さの娯楽室がひとつあり,テレビを見たい学生はそこにやって来た.150という人数からすると狭いようだが,十分に足りていた.

以上,近年ではステキな男子のニックネームとしてよく使われる「王子」ということばを,そのようなニュアンスにはまったく無頓着に使っていた自分を少々の照れとともに思い出し,それが呼び水となって当時の回顧の断片を記してみた.

《追記 2012-11-26》写真は上記学生寮のスナップショット(クリックで拡大)である.僕が入っていた頃が築20年ほど,この写真を撮ったのは更に20年強が経過した2010年である.20年強が経ち,より古びて,より雑然としているが,印象としては僕が入っていた頃と大きくは変わっていない.

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