脳・人間

2017年8月18日 (金)

論争は意見の食い違いか? それとも好みの食い違いか?

トルストイ著「アンナカレーニナ」に出て来る以下の箇所は,論争の本質を突いている.純粋に意見を闘わせている議論はまれで、ほとんどの議論は、冷静に聞いてみると、感情が主役になっている。感情を抑え、論理で議論できる人は大人である。

「きわめて聡明な人々の議論に立ち会って、レーウィンはしばしば気づいてきたのであるが、さんざ苦労し、論理の微妙な駆け引きや、おびただしい言葉をついやした末に、結局、討論している当人たちが、自分らが長いことかかって互いに論証しようと努めていた問題なぞ、とうの以前、論争のはじめからわかっていたくせに、お互いの好みが違うばかりに、論破されまいとして、自分の好むものを明らかにしようとしないだけの話なのだ、という意識に達することがよくあるものである。」

〈出典〉世界の文学セレクション36「トルストイI・アンナカレーニナI」トルストイ著;原卓也訳、中央公論社(1994年刊)、476ページより。

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2017年4月 4日 (火)

目の前にあっても、意識しないと…

オトナになってからは少々変わって、そうでもない場合が増えてはきたが、は元来、モノを使い始める前にマニュアルを熟読するタイプである。

十代の頃は、辞書を買うとまず、記号や略号の説明をはじめとする説明部に、ひと通り目を通した。
アラハーからアラ還への中継地点に達した現在では、ややせっかちに目的に向かって直進する傾向が強くなったものの、今の車に乗り始めたときにはマニュアル(取扱説明書)の隅々まで目を通した・・・・付箋を貼りながら。

それなのに、つい最近になって、無線キーに付いている3つ目のボタンの機能がやっと把握できた。
付箋を貼りながらマニュアルを読んだにもかかわらず、である。そして、今の車に乗り始めてから、あと数ヶ月で4年になるにもかかわらず、である。

無線キーの3つのボタンは、1つ目は「ドアロック」、2つ目は「ドアロック解除」、そして3つ目は「トランクのロック解除」と理解していた。
3つ目の機能は、面白いが、便利な機能には思えず、まったく活用していなかった。

ところが、3つ目のトランクのロック解除は大変に便利な機能であることが分かった。

ドアロック状態にかかわらず、そのボタンを押すと、トランクのロックを解除するだけでなく、トランクの固定まで解除され、トランクドアが少し浮いた状態になるのだ。

トランクへの荷物の出し入れが大変にしやすくなるこの機能は、今後頻繁に活用したい機能である。

さてさて、最後に、今の車に乗り始めて1年後に気づいたことに触れておこう。

それは、トランクにもシガーソケットがついていることである。
僕の車生活では使用する機会はなさそうではあるが、気づいた当時は、1年も気づかなかった自分が可笑しかった。
(今回の3つ目のボタンは、それをはるかに上回る可笑しさであったから、シガーソケットの件は影が薄くなってしまったが…。)

まとめると、目の前にあるものに気づけるかどうかは自分次第ということだ。

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2017年4月 2日 (日)

能力が10倍になれば、悩みも10倍に。

がよく聴くラジオ番組「真打ち競演」(NHKラジオ第1)で、落語家の三遊亭天どんさんが噺のまくらで面白いことを言っていた(2016年12月10日放送分)。


 もしも脳が10倍使えるようになったなら、10倍の能力が発揮できて天才になれそうに思うかもしれませんが、同時に悩みも10倍になるでしょう。

このような内容だった。

あらゆるものごとは別のものごととくっついているということを分かりやすくたとえていると思う。

[補足]この番組は、毎回3組の芸人が登場する。1組目は(コンビ)漫才、2組目は(ひとり)漫談、3組目が落語という構成になっている。漫談家ぴろきの面白さを知ったのも、この番組だった。

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2016年10月26日 (水)

抑圧

今年(2016年)6月,ファミリーレストランで耳にした,老夫婦の会話である.
夫婦はメニューを見ながら,注文品を考えていた.

夫 「まぐろにしようかな.」
妻 「まぐろならうちで食べられるでしょ!? これにしたら.」
〈しばらくして〉
夫 「それでいいや.」

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2016年2月11日 (木)

ソフトバンクとグリコのコラボ戦略に,まんまとはまった話

数か月前のことである.家電量販店入り口付近で営業活動をしていたソフトバンクの営業スタッフからプリッツの小箱をもらった.

バター味のそのプリッツは,数十年ぶりに食べたにはとても美味しくて,昭和40年代にプリッツをはじめて食べた幸福感がよみがえったように思えた.

小箱だからあっという間になくなってしまったその味を求めて,僕はコンビニに行った.
が,バター味は売っていなかった.
しかたなく,コンビニに置いてあった別の味(サラダ味)のプリッツを買った.
コンビニとスーパーマーケットでは品揃えが違うことがあるから,ソフトバンクでもらったのと同じ味のプリッツはコンビニには置いてないのかもしれないと思いつつ,それがソフトバンク味ではないと知りつつも3度ほどサラダ味のプリッツを買い,そして食べた.

となると気になるので,インターネットで調べてみたところ,バター味は存在するが,現在は業務用としてのみ流通している(そのためグリコWebサイトの商品一覧にも掲載されていない)ことが分かった.

いずれにせよ,ソフトバンクとグリコのコラボ戦略に見事にはまってしまったのは間違いない.
この数十年間,プリッツを買ったことのない僕が,ひと月の間に3度も買ってしまったのだから.
そして,いよいよ,久々に食べた美味しいバター味に再会したくて,業務用プリッツを購入しようかどうか迷っているのだから.

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2016年1月16日 (土)

気づきが気づきで終わらずに成果となった例

記事「ただの水がジュースになる「魔法のカップ」!?脳を騙すらしい・・・」が目に入った.

その記事からもリンクされている "The Right Cup: Trick Your Brain, Drink More Water!" には,購入方法だけでなく,錯覚する理由や,プロジェクトの歴史(ロードマップ)など,日本語記事にない詳しい情報が書かれている.

かく言うも,実は同様の現象に気づいていた.

ボトル型の缶の日本茶や,同じくボトルの型の缶のブラックコーヒーを飲み終えた後に,ミネラルウォーターを入れて飲むと6割方元のお茶やコーヒーを飲んでいる感覚になるということに気づいていた.(※個人の感想です)

僕のこの気づきについては,2,3名と雑談の話題にしただけで,ほとんど僕個人の一過性の感想に過ぎなかった.

上述のプロジェクトの発端は,恐らく,僕の気づきと同様のことだっただろう.

あらゆる成果は,振り返ってみれば,ちょっとした気づき(発見)が元になっている.そのような無数の例のひとつという意味で特別ではないが,僕自身もその一端に気づいていたという意味で特に興味深い例である.だからといって,僕がカップを商品化できた可能性が少しでもあるとは思っていない——念のため.

ましてや,ただ面白いと思っただけの僕は,〈味と香りがあるが,実は飲んでいるのはただの水なのだから,ダイエットに役立つ〉という効果を思いもよらなかった.元々が(ほぼ)ノンカロリーである日本茶やブラックコーヒーが僕の出発点であり,その出発点から一歩も踏み出せなかったところも,その後の発展がなかったひとつの要因だろう.

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2015年12月18日 (金)

フィリングイン,その後

ノオト:フィリングイン(filling-in)」では,実は人がまったくいないわけではないのだが,人気(ひとけ)のない寂しげなキャンパスに見える写真をデモンストレーションした.

その後,そのデモンストレーションをバージョンアップしたページを作った.

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2015年12月 5日 (土)

潜在危険デザイン,その後

Turnsignallamp
2009年12月4日の「ノオト:潜在危険デザイン」で,運動錯視(動きがないにもかかわらず動きがあるように見える錯覚)によって自動車ウインカーの指し示す方向を誤認識する可能性があることを述べた.

その後しばらくの間は,その考えをただ温めていたが,2013年春に,自動車業界関係者が集まる大規模な研究集会で発表し,潜在的危険性を訴えた.しかし,ただ理論的可能性を述べただけの主張は,多くの聴衆の心には響かなかったように思えた.

反応の悪さに発奮したは,すぐに,研究室の学生とともに,僕の主張の正誤を検証する実験を始めた.自動車後部を単純化したアニメーションをパソコンのディスプレイに次々と表示し,ウインカーの指し示す方向をできるだけ早く回答してもらう心理実験である.

実験の結果,僕の主張を裏付ける結果が得られたので,2014年春に,実験結果を携えて2013年春と同じ研究集会に臨んだ.実験結果を示したことで,前の発表よりは関心を持つ人は増えたようだが,反応のほとんどは実験の設定や方法に対する問題点の指摘であって,手応えはなかった.

とはいえ,ともかくも,ある状況の下ではウインカー誤認識の率が高まる,つまり,潜在的に事故の危険性が高まるという結果が得られたので,研究成果を改めて整理して学術雑誌に投稿することにした.査読者(=匿名の論文審査者)からの指摘とそれへの対応の数か月を経て,論文が採択され,さらに数か月を経た2015年11月に論文が公開された(参考までに,この辺りの時間経過は工学系論文の平均的な流れであろう).

【論文情報とPDF】
指示方向の判断エラーを誘発する恐れのある自動車方向指示器について, 電子情報通信学会論文誌 Vol.J98-D, No.11, pp.1402-1410 (Nov. 2015). DOI:10.14923/transinfj.2015JDP7013
[論文PDF]
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2015年7月 4日 (土)

フィリングイン (filling-in)

日経サイエンス2015年7月号の記事「illusions 知覚は幻 〜ブランクを埋める幻」には,人間がブランクを埋める能力が紹介されている.

ブランクを埋める能力はフィリングイン (filling-in) と呼ばれ,人間の知覚や認識や記憶のあらゆる部分に根深く関わっている.

フィリングインは人間にとって欠かせない補完能力であるが,その能力を逆手に取った人工的な作品を示されると,たやすくだまされてしまう.
(動物としての人間は,その歴史上,そのような人工的な作品と同じような状況に直面することは,まずなかっただろうから,問題とはならなかったはずである.研究者は,人間の“強み”の裏返しであるところの“弱み”の分析を利用して,人間の本質を明らかにしようとするものなのである.)

さて,その記事中には,フィリングインが実感できる,インパクトのある画像が掲載されている.とてもよくできた作品なのだが,その作品を素材にしてフィリングインとは何ぞやを語るには,シチュエーションが制限される.
そこでは,インパクトでは負けるが,シチュエーションを選ばずに使える画像を,その記事の画像を真似て作ってみた.

↓これ(クリックで拡大)は,人のいない寂しげなキャンパスに見えると思う.
Withmask_s

しかし,グレーの目隠しをはずせば,結構な人がいる.
[目隠しのない場合と目隠しのある場合を並べたは画像はこちら]

〈改訂:2015-07-05〉目隠しのない画像と目隠しのある画像を1枚の画像として合体させ,比較しやすいようにした.

〈追記:2015-12-18〉「ノオト:フィリングイン,その後」も参照.

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2015年2月 5日 (木)

過ぎたるはなお及ばざるがごとし

以前,このノオトで,清潔と衛生的の違いについて述べた.

最近,読売新聞サイトで,「身の回り清潔になり?子どもの花粉症患者が増加」なる記事を読んだ.

子どもの患者の増加や,発症の低年齢化の原因として,スギやヒノキが増えていることに加えて,身の回りが清潔になったために免疫力が高まらず,アレルギー反応を起こしやすくなった可能性があると述べられている.

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