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2013年10月12日 (土)

嘘も方便

あまのじゃくは,扉に「引」と書いてあっても押してみることが多い.

それは,それが構造上引かなければ開かないことの説明なのか,それとも,引いても押しても開くのだが,利用者の混乱を避けるためのお願いなのか区別したい(突き止めたい)からである.
後者は,出る人と入る人が扉の両側から同時に押したりすると混乱するから,片側には「押」,もう片側には「引」と書いてあるということである.これは,階段に掲示された「左側通行」と同じ意味を持つ.
つまり,左右どちら側を歩いても構わないのだが,すれ違う歩行者がぶつかったりせず,円滑に人が流れるようにするためのお願いである.

今回は自動ドアについての話である.

自動ドアには,ドアの前に立つだけで開くタイプ以外に,ドアに取り付けられている縦長のスイッチを押すタイプ,あるいは,ドアに「触れて下さい」と書かれた表示が貼ってあるタイプがある.
触れるタイプには,スイッチはなく,「触れて下さい」の表示に触れるだけでよい.

スイッチタイプ,触れるタイプのどちらも,人通りの多い場所に使われる.
すなわち,ドアを通過したい人以外にもドアの前に人が来る場合が多く,不必要にドアが開くのを避けたい場合に使われる.
(単にドアの前を通過しただけでは開かずに,入りたい人が来た場合だけドアが開く自動ドアについては,ノオト「考えもしなかった自動ドア」を参照.)

触れるタイプは,僕がよく利用する特急列車の車内に使われている.
ドアの前に立つだけで開くタイプが使われている列車だと,最前列通路側の人が足を動かしただけでドアが開いたり,電話をするためにデッキにいる人に反応して開いたりと,不必要な開閉が多い.
その点,触れるタイプならばそのような不必要な開閉が発生しない.

この触れるタイプの自動ドアに対して僕が以前から取っていた行動は,触れずに開けることである.

説明を簡単にするために「触れて下さい」と書いているのだろうが,近づければ開くはずだと思ったのが最初である.
案の定,触れなくても,手を表示から5ミリ程度に近づければ開いた.
(ただし,揺れる電車内で,触れずして確実に開けるためには,ちょっとしたコツがいる.)

この「触れて下さい」は,嘘も方便の一例である.
もしも「この表示の付近に手を近づけて下さい.ただし,近づけ方次第では開かないことがありますので,あらかじめ了承下さい.」などと説明されていたとしたら,説明としては正しいのだが,それでは要領を得ないから,方便の嘘をつくのである.

以上で今回の話にけりをつけたいところだが,続きがある.

触れるタイプの自動ドアに触れずして開けることに熟練し,苦もなく触れずにドアを開けられるようになった頃,ふと,人の手の検知方法について考えた.
はじめは,「触れて下さい」の表示部に,スマートフォンのタッチパネルと同じ静電容量センサーが付いているのだと考えた.
指でタッチパネルに触れたり,指をタッチパネルに近づけるとタッチパネルの電気的性質に変化が生じ,それを元にタッチが検出されるのだが,それと同じ原理だと考えた.

しかし,落ち着いて見てみると簡単に分かるのだが,静電容量センサーではなかった.

それは,赤外線センサーである(赤外線以外の光かもしれないが,間違いなく光センサーである).
自動ドアの表面すれすれのところを赤外線が走っていて,その赤外線が手でさえぎられるとドアが反応するのである.

電車内でも,店舗でも,触れるタイプの自動ドアの左右には直径数ミリの穴が付いている.
一方の穴から赤外線が出ており,もう一方の穴にセンサーが埋め込まれている.

ここから分かることは,触れる位置は,「触れて下さい」の表示の位置である必要はないということだ.
左右の穴を結ぶ線上ならどこでもよい(表示と同じ高さならどこでもよい)のだ.

ここで,もうひとつの,方便としての嘘に触れる必要がある.
確かに「触れて下さい」表示の位置でなくて構わないのだが,触れる場所によっては指が挟まれる危険がある.
表示の位置の正反対(ドアが引き込まれる側)に触れると,触れ方やタイミングによっては指が引き込まれる危険がある.

今回の話をまとめると,触れるタイプの自動ドアには,…

●手を触れなくてもよいのだが,説明を簡単にするために「触れて下さい」と表示.
●触れる場所は,左右の穴を結ぶ線上であればドアの左端から右端までのどこでもよいのだが,安全性を確保するために触れる場所を指定.

…これら2つの,方便としての嘘が使われている.

最後に,今の僕がどのような方法で列車内の触れるタイプの自動ドアを開けているかといえば,上述の穴をふさぐように1本または2本の指をかざしている.

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