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2012年7月22日 (日)

パッと分かる?

Popoutornot_s心理学,あるいは理科系分野も含めてそれが学際的に広がった形態といえる認知科学の分野では,視覚情報処理(見ることの情報処理)の研究も盛んである.

自身もそれを研究テーマの一部としているから,いつでもどこでも,さまざまな観点からものを見るようにしている(そして見てしまう).

「図と地」や「ポップアウト」はこの分野でよく目にするキーワードである.
(インターネット検索すると,「図と地」に関してはここでの意味の説明や図形の例が多数ヒットするが,「ポップアウト」についてはここでの意味の説明が少ないようだ.)

「図と地」は,一枚の絵の中から,形として認識される部分と,絵の背景として認識されるものの区別に関する概念である.

僕たちが普段目にする大半の風景や絵や写真は,図と地が容易に,そして瞬時に分離されるが,どうしても図と地がゆっくりと入れ替わって見えてしまう図形がある.これは研究素材として興味深いので,多くの研究者がそれらを題材にしている.ルビンの壺を代表とする多義図形がそれである.

「ポップアウト」(pop out)は,ちりばめられた多数の図形の中から,1つあるいは少数の異なる図形がパッと目に飛び込んでくる現象である.

次の例では,背景とは異なる少数派の図形がパッと目に飛び込んでくるが,

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次の例では,上の場合よりも少数派を見つけるのに時間がかかる.

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最初の場合をポップアウトする,二番目の場合をポップアウトしないという.

さて,図と地が分離しにくい,あるいは書かれている図形がポップアウトしない一例を紹介したい.

1〜2年前から時折偶然に見るようになり,気に入って番組本まで買ってしまったテレビ番組「和風総本家」に,図と地が分離しにくい,そしてシンボルがポップアウトしない図形が出てくる.それが上の画像である.

画像は,クイズ形式のこの番組で,出題前に現われる映像のスナップショットである.赤い図形が時計回りにゆっくりと回転する.

僕はこれを見るたびに,つい,「北口」と読んでしまう.しかし,意味合いからして,実は「問」である.

僕が「北口」と読んでしまう理由として次のものがすぐに思い浮かぶ.
・「問」にあるはずの上部左右の角がないこと(┏ と ┓ がないこと).
・「問」にあるはずの下部の隙間が極端に小さいこと.
これらは,円形の輪郭が文字の一部と認識されないことにつながり,したがって,円形を除いた「北口」がパッと目に飛び込んでくるのだろう.

それと同時に,多数の印鑑を見てきた経験が影響していると言えるかもしれない.これは印鑑を思わせるデザインだから,円形の輪郭を無意識に除外して読んでいるのかもしれない.

最後に・・・

上で多義図形に言及したが,多義図形には知覚交替現象が付随する.この画像も,じっと見つめていると,「問」と読める瞬間と「北口」と読める瞬間が数秒周期で交互にやってくるように見える.

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