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1999年3月

1999年3月 2日 (火)

くさげ?

僕には「万一(まんいち)」は格調高く「今一(いまいち)」は格調低く(*)感じられる.岩波国語辞典でも「今一」には俗語のマークが付いているが「万一」には付いていないので,専門家の認識も同じようだ(**).それぞれ「万が一にも」,「いまひとつ」が語源だと考えると,「万一」も発明された当時はかなり格調低い表現だったのかもしれない.
格調と言えば,僕にはまったく意外だったのだが,「すてきだわ」の「だわ」は現代では少しも下品な言い方ではないのに,それが流行りだした明治時代には新聞・雑誌をにぎわすほどに嫌われる話し方だったようだ(***).

話し方と言えば,近年,都会に住む20代以下の女性(及び少女)には口,舌,顎から力を抜いた,言い換えれば「省エネ」のしゃべり方をするひとが目立つ.発音,アクセントなどほとんどの側面は省エネで説明がつく(…と思う).

勿論これは現代に始まったことではない.「わ,ゐ,ゑ,を」の中で本来の発音を保っているのは「わ」のみである.「を」も僕が小学生の頃ははっきり“wo”と教えられたが,現在は(教育ではどうか分からないが)“o”と発音するのが当たり前である.「ゐ(wi),ゑ(we)」は,現代仮名づかいでは「い,え」に置き替えられているので過去の遺産に過ぎないが,「居間」,「今」はそれぞれ「ゐま」,「いま」と書き分けられていて,当然発音も違っていた.

最近,ぼんやりとテレビを見ていたら,シャンプーのコマーシャルで「くさげ」と言っているので何のことかと思ったら,どうも「くせげ(癖毛)」のことのようだ(「せ」を省エネで発音すると「さ」に近い「せ」になる).口に締まりがなく,まるで訛っているような発音になっている.まあ,都会のひとびとが訛ってくれれば,抑揚を抑えたしゃべり方も含めて,特に北関東から東北の者(∋僕)にとっては訛りによるコンプレックスが軽減されて嬉しい.大きく見れば地方の復権につながるだろう.

(*) 「イマイチ」とカタカナで書くと一層格調低く感じられるのが不思議だ.
(**) 因みに広辞苑第4版には付いていない.
(***) 米川明彦「若者語を科学する」明治書院(1998年3月)による.この本は,子供が絵本を借りに行くのに付き合った市立図書館で偶然に発見して借りてきたのだが,明治から平成までの若者語の変遷が豊富な例とともに解説してあるなど,価値ある本である.ただ,「なるへそ」が載っていないのが気になる(索引から抜けているだけかもしれないが…).

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